Column
まんがでわかる商標登録
「その店名、本当にあなたのものですか?」
公開日:2026年7月25日
監修:弁理士 安達 友和(弁理士法人東海特許事務所)
10年続けた人気店が、ある日いきなり店名を使えなくなる。商標登録をしていない場合、実際に起こりうる話です。まずは8コマの漫画でご覧ください。
コマ1:開店10年目の人気パン屋「こむぎ堂」に行列ができ、店長が「今日も行列です」と喜んでいる。
コマ2:ある日、通知書が届く。「こむぎ堂の使用は当社の登録商標を侵害しています。使用を中止し…」。店長は「うちの店名が他人のもの!?」と驚く。
コマ3:店長が「10年も使ってるのに! 会社の登記もしたのに!」と抗議する。
コマ4:弁理士が「会社の登記や屋号は商標権ではありません。商標は先に出願した人のものです」と説明する。
コマ5:看板、袋、のぼり、名刺、SNS、ドメインをすべて作り直すことになり、店長が落ち込む。
コマ6:隣の店主が「うちは開店前に商標登録したから、真似っこも止められた」と話す。
コマ7:相談・調査・出願・登録の4ステップの図。
コマ8:「商標登録は取られる前に。」というまとめ。
※この漫画はフィクションです。登場する店名・人物はすべて架空のものです。
なぜ「先に使っていた側」が負けるのか
日本の商標制度は先願主義です。同じ(または似た)名前について、先に特許庁へ出願した人が商標権を得ます。何年使っていたか、どちらが先に商売を始めたかは、原則として関係ありません。
他人の出願より前から使っていた場合に認められる「先使用権」(商標法32条)という制度もあります。ただしこれは、他人の出願時点で自分の商標が需要者に広く認識されていたこと等が要件で、立証は容易ではありません。「地元では有名」という程度では足りないと判断されることも珍しくありません。
つまり:使い続けていること自体は、名前を守る手段にはなりません。名前を守るのは「登録」だけです。
「会社の登記をしたから大丈夫」は、よくある誤解です
店名やブランド名に関係しそうな手続はいくつもありますが、そのほとんどは商標権とは無関係です。
| 手続 | 守られるもの | 商標権になる? |
| 商号登記(会社の設立登記) | 会社の名称(商号) | なりません |
| 屋号の届出(開業届など) | 税務上の屋号の表示 | なりません |
| ドメインの取得 | そのドメイン名の使用 | なりません |
| SNSアカウントの取得 | そのサービス内での表示名 | なりません |
| 商標登録(商標法) | 商品・サービスに使う名前やロゴ | なります |
商号登記は「会社の名前」の制度、商標は「商品・サービスの名前」の制度です。別の法律・別の目的の制度なので、登記をしても、その名前を独占できるわけではありません。
名前を失うと、何が失われるのか
実際に店名・商品名の変更が必要になったとき、負担は看板の作り直しだけでは終わりません。
- 作り直しの費用:看板、のれん、包装袋、紙袋、ショップカード、名刺、のぼり、ユニフォーム、ウェブサイト、SNS、ドメイン、印刷物
- 信用の分断:これまでの口コミ・検索結果・SNSのフォロワー・リピーターとのつながりが、新しい名前には引き継がれません
- 告知のコスト:取引先・既存客への案内、地図サービスや各種掲載情報の修正
- 交渉の負担:使用の中止だけでなく、損害賠償を求められる場合もあります
守るコストと失うコスト:商標登録に必要な特許庁費用は1区分なら10年で44,900円(別途、弁理士費用)。一方で名前を失ったときの損失は、作り直し費用だけでなく、積み上げた信用にまで及びます。
費用と期間の目安
特許庁へ納める費用
| タイミング | 金額 | 1区分の場合 |
| 出願時 | 3,400円 +(8,600円 × 区分数) | 12,000円 |
| 登録時(10年分) | 32,900円 × 区分数 | 32,900円 |
| 登録時(5年分割納付) | 17,200円 × 区分数 | 17,200円 |
| 更新時(10年分) | 43,600円 × 区分数 | 43,600円 |
1区分で出願から登録(10年分)までの特許庁費用は合計44,900円です。これに別途、弁理士費用がかかります。金額は2026年7月現在のもので、弊所の手数料は料金ページでご確認いただけます。
かかる期間
出願から最初の審査結果が届くまでの期間は平均6.9か月(2024年度)です。要件を満たせば早期審査を利用でき、その場合は平均1.7か月に短縮されます。登録までは概ね1年前後を目安にお考えください。
審査の途中で「拒絶理由通知」が届くこともありますが、これは不合格の通知ではありません。意見書や補正書で反論し、登録に至るケースも多くあります。
ご相談から登録までの4ステップ
- 1
ご相談使いたい名前と、どんな商品・サービスに使うのかをお聞かせください。ご相談は無料です。
- 2
調査先に似た商標が登録・出願されていないかを調査し、登録の可能性と、通しやすい出し方をご提案します。
- 3
出願商品・サービスの「区分」(全45区分)を過不足なく選び、特許庁へ出願します。
- 4
登録審査を通れば登録料を納付し、商標権が発生します。以後は10年ごとの更新で維持できます。
いちばん大事なタイミング:理想は「発表・販売の前」に出願しておくことです。名前を世に出したあとは、他人に先回りされるリスクが上がります。
よくあるご質問
Q. 会社の登記(法人登記)をしていれば、店名は守られますか?
守られません。商号登記は会社の名称を登記する制度で、商標権とは別の制度です。屋号の届出、ドメインの取得、SNSアカウントの取得も同じく商標権にはなりません。商品やサービスに使う名前・ロゴを独占するには、商標登録が必要です。
Q. 先に使っていたのに、あとから出願した他人に権利を取られてしまうのですか?
日本の商標制度は、先に出願した人に権利を認める先願主義です。他人の出願前から使っていた場合の「先使用権」(商標法32条)もありますが、自分の商標が需要者に広く認識されていること等が要件で、立証は容易ではありません。使用を続けているだけでは安心できないのが実情です。
Q. 商標登録の費用はいくらかかりますか?
特許庁へ納める費用は、出願時が3,400円+(8,600円×区分数)、登録時(10年分)が32,900円×区分数です。1区分なら出願12,000円+登録32,900円=合計44,900円で、10年間の権利が得られます(5年分割納付も選べます)。これに別途、弁理士費用がかかります。2026年7月現在の額です。
Q. 出願してから登録まで、どれくらいかかりますか?
出願から最初の審査結果が届くまでの期間は平均6.9か月(2024年度)です。要件を満たせば早期審査を利用でき、その場合は平均1.7か月です。登録までは概ね1年前後を目安にお考えください。
Q. 登録したあとに、やるべきことはありますか?
商標権は10年ごとの更新で半永久的に維持できます(更新は満了前6か月以内が原則、5年分割納付も可)。また、継続して3年以上使用していないと取消審判の対象になり得ますので(商標法50条)、チラシ・包装・店頭写真などの使用の証拠を日付入りで残しておくことをおすすめします。
その名前、もう「自社のもの」になっていますか?
まずは「登録できるかどうか」の調査から。ご相談は無料でお受けしています。
監修:安達 友和(あだち ともかず)
弁理士法人東海特許事務所 代表弁理士(登録番号18078)。特定侵害訴訟代理業務付記登録。一級知的財産管理技能士(ブランド専門業務)。中小企業・個人事業主のブランド保護から、国内外の商標・特許出願まで幅広く手がけています。