「海外でも商標を取っておきたいが、費用がいくらかかるのか見当がつかない」――海外展開を検討する企業様から最も多くいただくご質問です。海外の商標登録費用は「どのルートで」「何か国に」「何区分」出願するかで大きく変わります。この記事では、費用の内訳と、代表的な2つの出願ルート(マドプロ・直接出願)の使い分けを解説します。

なぜ海外でも商標登録が必要なのか

商標権は国ごとに独立しています(属地主義)。日本で商標登録していても、その効力は海外には及びません。中国や東南アジアでは、日本企業のブランド名が第三者に先に出願されてしまう「冒認出願」が実際に多く起きており、進出してから商標が使えない・買い取りを要求されるといったトラブルにつながります。進出の可能性がある国では、早めに商標を確保しておくことが最も安上がりな対策です。

海外商標登録の費用は3つの要素でできている

海外出願の費用は、次の3つの合計です。

① 事務所手数料日本側の代理人(弊所)の手数料。調査・出願書類の作成・中間対応・報告等。
② 各国庁費用出願先の特許庁(またはWIPO)に支払う公的費用。国・区分数で変動します。
③ 現地代理人費用直接出願の場合に必要な、現地代理人の手数料。国により相場が異なります。

このほか、外国送金手数料や為替変動の影響があります。「思ったより高くなった」の多くは②③と為替が原因なので、見積り段階で3つの内訳が明示されているかが事務所選びのポイントです。弊所ではすべての内訳をお見積り時に開示し、後出しの追加費用はありません。

2つの出願ルート:マドプロと直接出願

マドプロ(マドリッド協定議定書)出願

日本の特許庁を通じて、WIPO(世界知的所有権機関)経由で複数国に一括出願できる制度です。日本での商標出願または登録(基礎出願・基礎登録)が必要です。

メリット:1通の願書で多数国をカバーでき、現地代理人費用が原則不要(拒絶時を除く)。更新管理も一元化。
注意点:基礎出願が必要。出願から5年間は日本の基礎出願の運命に連動する(セントラルアタック)。

各国直接出願

出願したい国の特許庁に、現地代理人を通じて個別に出願する方法です。

メリット:国ごとの制度に合わせた柔軟な対応が可能。日本での基礎出願は不要。権利が国ごとに独立し安定。
注意点:国ごとに現地代理人費用がかかるため、対象国が多いと割高に。

結局どちらが安い?──目安は「2か国」

一般に、指定国が2か国以上であればマドプロが有利になるケースが多くなります。1か国のみ、特に米国や中国だけであれば、直接出願のほうがトータルコストや権利の安定性で優れる場合もあります。

たとえば米国は、マドプロ経由でも使用宣誓等の米国特有の手続が必要になるため、最初から現地実務に沿って直接出願するメリットがあります。中国は審査が速く費用も比較的安いため、直接出願がよく選ばれます。「マドプロありき」でも「直接ありき」でもなく、対象国の組み合わせごとに両ルートを比較するのが正解です。弊所ではご相談時に必ず両ルートの比較見積りをご提示しています。

弊所手数料の目安

弊所の手数料の目安(1区分・1か国)は次のとおりです。庁費用・現地代理人費用は別途かかります。

マドプロ出願(1か国指定)75,000円〜
米国直接出願110,000円〜
中国直接出願85,000円〜
EU(EUIPO)直接出願120,000円〜

複数区分・複数指定国の場合はディスカウントを適用します。国別の総額は、外国商標かんたん見積ツールで約1〜3分でご確認いただけます(見積書PDFのダウンロードも可能)。

費用を抑える3つのコツ

1. 区分・指定商品を絞り込む

庁費用は区分数に比例して増えます。実際に使う商品・サービスと、防衛上必要な範囲を見極めて区分を設計することが、最も効果の大きいコスト削減です。

2. 出願国の優先順位をつける

「製造国」「販売国」「模倣リスクの高い国」を軸に優先順位をつけ、段階的に出願する方法もあります。マドプロなら事後指定で後から国を追加できます。

3. 早めに動く

冒認出願をされてからの取消請求・買い取り交渉は、先に出願しておく場合の何倍ものコストがかかります。展示会出展や商談の前に出願しておくのが鉄則です。

よくあるご質問

Q. 費用はいつ・何回払うことになりますか?
大きく「出願時」と「登録時」の2段階です。国によっては登録時費用がかからない一方、米国のように登録後も使用宣誓等の維持手続費用が発生する国もあります。お見積り時に国ごとの発生タイミングをご案内します。
Q. 登録後にも費用はかかりますか?
商標権の存続期間は多くの国で10年で、更新時に更新費用がかかります。米国の使用宣誓書など、国によっては中間的な維持手続が必要です。弊所では期限管理も含めてサポートします。
Q. あとから出願する国を追加できますか?
マドプロでは「事後指定」で後から国を追加できます。直接出願の場合はその国ごとに新たに出願します。ただし他社に先に取られるリスクがあるため、進出可能性のある国は早めの確保をおすすめします。

自社の場合はいくらかかる?
国と区分数を選ぶだけで、概算費用と見積書PDFをその場で確認できます。

安達 友和
監修:安達 友和(あだち ともかず)
弁理士法人東海特許事務所 代表弁理士(登録番号18078)。特定侵害訴訟代理業務付記登録。一級知的財産管理技能士(ブランド専門業務)。国内外の商標・特許出願を多数取り扱い、マドプロ・各国直接出願の両ルートによる外国商標の権利化を得意とする。